北軽井沢 6月の物語

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北軽井沢 6月の物語
01.2つの伝説
02.乙羽伝説1
03.乙羽伝説2
04.乙羽伝説3
05.乙羽伝説4
06.罪と罰
07.
08.
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10.
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16.
17.

「バア様」
「うん?」
「村が全滅するって本当ですか?」
「このまま雨が降らねばな」
「雨は降りましょうか?」
「(元気なく)さあ・・・」
「乙羽は、どうしたらいいのでしょう」
「・・・」
「乙羽に出来る事があればいいのですが」
村の年寄り衆たちは乙羽の問に何も答える事が出来ませんでした。
「あ、そっちへ行ってはいかん!」
「え?」
乙羽は、「この先、女人禁制」の看板のある所に入ろうとしていました。
「そこから先は竜神様の土地、儂ら女衆は行ってはならんのじゃ。行けば竜神様に祟られる」
「それは本当ですか?」
「昔、掟を破った女がおったが、村はたちまち嵐となった。竜神様はたいそう御怒りになってのう、掟を破った女をひとみごくうに差し出すまで許してくれんかった」
「・・・」
「これ、乙羽!」

 乙羽は何を思ったのでしょう!
 突然、年寄り衆の忠告を無視して、どんどん禁断の地に入って行ったのです。
 年寄り衆は乙羽を呼びました。

「乙羽、戻ってこんか!」
「竜神様が御怒りになれば村に雨が降ります」
「馬鹿を言うでない、お前、自分がどうなるか知ってるのか?」
「でも、村が助かります」
 さっきまで晴れていた青空は、その時すでに怪しい雲行になっていました。
「今なら遅くはない。たのむから戻ってきてくれ!」
 しかし、乙羽は、
「和尚様に宜しく言っといてください。乙羽は生れ変りますと!」
と言って、禁断の地へ消えて行きました。
「乙羽!」
 年寄り衆たちは皆、泣き叫びました。その涙とともに雨が降りそそぎ、雷鳴が響きました。あたり一面はたちまち嵐となってしまいました。乙羽は竜神様に向って叫びました。
「竜神様、竜神様、御怒り下さい、私を罰して下さい。竜神様!」
 乙羽はそれっきり帰って来ませんでした。
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